抄録
食道静脈瘤302症例を対象に, 内視鏡的形態と門脈血行動態について比較検討した.1) SMA造影・SPA造影での左胃静脈の描出率はF1症例/F2症例/F3症例で47/66/84%, 短胃静脈の描出率はそれぞれ13/21/24%, LGA造影での食道静脈瘤の描出率はそれぞれ97/100/100%であった.2) 左胃静脈の血流方向はF1症例では求肝1生47%, to and fro 23%, 遠肝性23%, 不明7%であり, 静脈瘤形態の増大とともに求肝性およびto and froの頻度は低下し, 遠肝性の頻度は上昇した.3) 食道静脈瘤は血行動態上, 胃体上部粘膜血流が主たる供血源となり, 門脈系血流の関与を認めない “LGA単独型食道静脈瘤” と, 供血源が胃体上部粘膜血流および門脈系血流の両者に由来している “混合型食道静脈瘤” とに分類できた.前者はF1静脈瘤症例の約半数, F2静脈瘤症例の約1/4, F3静脈瘤症例の約1/6を占めるのに対して, 後者はF1静脈瘤症例の約半数, F2静脈瘤症例の約3/4, F3静脈瘤症例の約5/6を占めていた.