日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム5: AYA世代に対するがん治療の問題点
AYA世代のがんの課題と解決法
~がん経験者の小児科医としての一考察~
楠木 重範
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2015 年 52 巻 5 号 p. 365-368

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抄録

近年AYA世代のがんについて,特に小児科・小児外科を中心に注目されつつある.医療者や患者の家族の共通の望みは,患者が不運にして若い時期にがんを経験しても,前向きに,自らの価値観を持って健やかに成長し,人生を全うすることであろう.そのためには,患者が自尊心を持つこと,ピアサポートがあること,この2点が必要である.私は13歳で悪性リンパ腫を発症し,約2年6か月間の闘病生活を経験した.その後,小児科医となり約16年間小児がんのこどもとその家族と関わらせていただいている.私は自分自身を,自尊心が乏しく,他人に心を許すことが苦手な,つまりピアと悩みを共有することを苦手とするタイプの人間と認識している.しかし2014年第3回社会イノベーター公志園というプログラムに参加し,1人で行う内省に加え,他者や集団の力を借りて内省することにより,ピアサポートの本当の意味を理解し,自尊心が芽生えた.このような経過をたどる症例は貴重と考え,ここに報告する.この一経験が,今後のAYA世代のがん医療に少しでも貢献できれば幸いである.またAYA世代のサバイバーたちからの情報を参考に,妊孕性の課題と医療施設におけるインターネット環境についても考察した.

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© 2015 日本小児血液・がん学会
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