日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
一小児専門病院における最近24年間での精子凍結保存の経験
治療関連不妊が予測される思春期男児に対して―その現状と問題―
角田 治美古舘 和季日野 もえ子落合 秀匡太田 節雄種山 雄一沖本 由理
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2015 年 52 巻 5 号 p. 392-398

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抄録

今回我々は,当施設(一小児専門病院として)での,最近24年間に行った思春期男性患者の精子保存の経験を報告する.2003年以前は,成人男性患者に対しても精子保存に関する全国的なガイドラインは存在しなかった.しかし我々は1990年以降思春期男児とその家族に治療関連性不妊と精子保存の説明を行い,同意が得られれば精子保存を行ってきた.現在まで精子保存の対象者は15例となり11例にはその説明を十分に行った.しかし2例は治療の緊急性により説明を行わず,2例は医師側の手違いにより説明を怠った.説明を行った11例中4例は精子保存を拒否している.保存を行った7例のうち2例が結婚し,1例は生殖補助技術により挙児を得,もう1例は妊孕性が回復し妻が自然妊娠した.1例は未婚であるが前処置軽減により造精能が回復した.現在まで精子保存を継続している患者は2例である.精子保存の本来の目的は妊孕性温存であるが,そのこと自体が精神的な励みになり,患者のQOL向上に寄与していると考えられる.良質な精子を得るためには治療前に精子を凍結保存するべきで,血液・腫瘍専門医は常にそのことを念頭に置き,患者に対して情報提供を行い他の医療者にも啓発していくことが必要である.精子保存に関する問題点として患者の適応基準,医療者側の情報提供の乏しさ,患者へのコミュニケーション不足,高い未婚率, 費用面などが挙げられ,今後我々は検討と対策を講じていかなければならない.

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© 2015 日本小児血液・がん学会
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