日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
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原著
HiMECレジメンにおけるメルファラン投与タイミング別に見た有害事象の比較検討
三上 真充梅田 雄嗣上野 浩生才田 聡平松 英文平家 俊男足立 壯一
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2016 年 53 巻 2 号 p. 112-116

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抄録

様々な小児固形腫瘍に対する自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法としてmelphalan (Mel),etoposide (VP16),carboplatin (CBDCA) からなるHiMECレジメンが広く用いられているが,時に腎不全・感染症等の致死的な有害事象発生例が認められる.今回,当院でHiMECレジメンを用いた患者17例のうち,VP16,CBDCAの後にMelを投与した9例(Mel後行群)と,先行してMelを投与した8例(Mel先行群)について,有害事象の発症頻度や重症度について後方視的に比較検討した.Mel後行群は高血圧の発症頻度が有意に高く(0% vs. 66.7%, p=0.009),有意差はないものの腎障害の発症頻度が高かった.一方,Mel先行群ではMel後行群と比べて重度の好中球減少期間が有意に長く (13日(中央値,範囲10~18)vs. 10日(中央値,範囲8~14), p=0.028),粘膜障害の発症頻度が有意に高かった(87.5% vs. 33.3%, p=0.049).今回の結果から,Mel後行投与に伴う腎障害や血管障害のリスクを考慮して,多くの症例でMel先行投与が望ましいことが示唆された.ただし,Mel先行投与に伴う感染症や粘膜障害のリスクを軽減するため,より安全性の高い投与スケジュールを検討する必要があると考えられた.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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