2016 年 53 巻 2 号 p. 143-146
初発時2歳の男児.CTで肝右葉を占める巨大腫瘍と肝S2,両側肺に多発転移巣を認めた.AFP高値から肝右葉原発肝芽腫,Stage IVと診断した.化学療法後にまず肝原発巣,肝内転移巣の切除を行った.さらに両肺転移巣切除術を行ったが,両肺下葉転移巣は残存した.自家骨髄移植,化学療法を追加し,発症から41か月で右肺転移巣切除術および左肺下葉切除術により肺転移巣は完全切除できた.44か月で右大脳に転移を認めたが,腫瘍摘出術,全脳照射を行い,以後19年無病生存している.肝芽腫では,完全摘出できることが最も重要な予後因子で,肝芽腫治療の原則は腫瘍の完全摘出である.本例は多発転移があり予後不良の肝芽腫であったが,集学的治療の一環として腫瘍を完全に摘出することで治癒につながった.