日本小児血液・がん学会雑誌
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特別講演2
CD26抗体を基盤とするトランスレーショナルリサーチ:悪性中皮腫の新規治療法開発を目指して
森本 幾夫
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2016 年 53 巻 3 号 p. 182-188

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抄録

トランスレーショナルリサーチの例としてヒト化CD26抗体の悪性中皮腫への新規治療法開発について述べたい.

CD26分子は110 kDaの膜タンパク質でdipeptidyl peptidase IV(DPP IV)酵素活性を持ちN末端から2つ目のプロリンやアラニンを切断する酵素である.

悪性中皮腫(MM)は胸膜中皮細胞から発生する非常に攻撃的な腫瘍で,一般的にはアスベストばく露により発生し,非常に予後が悪い.

有効な標準治療法は存在しないことから,新規かつ有効な治療法開発は急務とされている.

我々はCD26分子は正常中皮細胞には発現しないが,上皮型中皮腫の約8割に発現することを報告した.更に,非常に生物学的活性の強い良質なヒト化CD26抗体を開発してゼノグラフトモデルマウスを用いて本抗体が強い抗腫瘍効果を有するという広範なデータを示してきた.

本結果から,ヒト化CD26抗体は悪性中皮腫の新規治療法として臨床応用できる有望な可能性を強く示唆した.

本抗体を用いて初めて人に投与する(FIH)第一相臨床試験をフランスにて行い,ヒト化CD26抗体は良好な耐容性及びCD26陽性腫瘍,特に治療抵抗性悪性中皮腫に対して有効性を示す予備的な証拠も得ることができた.これらの結果をふまえて,日本でも悪性中皮腫をターゲットとして,第一相臨床試験が近々開始される予定である.

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