日本小児血液・がん学会雑誌
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多職種医療者合同シンポジウム: 小児がんの子どもと家族の治療・検査・処置における意思決定プロセスを支える多職種連携
小児がん患者と家族に対する薬物療法支援
齋藤 義正寺門 浩之
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2016 年 53 巻 3 号 p. 239-244

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抄録

小児がんに対する化学療法は固形がんから血液腫瘍まで幅広く,子どもに対する治療は,成人とは異なるアプローチが必要になる.小児がん医療における薬剤師の役割は,がん化学療法を安全かつ適切に実施することであり,その活動内容として,がん化学治療レジメンの管理,処方監査,支持療法などの処方提案,服薬指導,副作用モニタリング,および医療スタッフへの情報提供などが挙げられる.患児に治療の理解を促すため,わかりやすい表現を用いた治療の手引きを利用することがあるため,その作成も重要な役割である.

アドヒアランス低下は予後に影響することが報告され,服薬拒否や飲み忘れをいかに防ぐかという課題に対して小児医療チームとして取り組む必要がある.もし嗜好によるものなら,剤形の変更,単シロップなどによる矯味,オブラートやカプセルの使用,同効薬への変更,脱カプセルや錠剤の粉砕などの解決策を伝え,患児や家族と一緒に考えることが有効である.患児とのコミュニケーションを図るのが難しい場合でも,患者家族や他職種と連携することによって解決できることが多い.

薬は持っているだけでは効果が得られないため,患児とその家族が受容できる方法を一緒に考えながら薬物療法を支援していく必要がある.適切な薬物療法支援を行うためには,小児医療チームの中で情報を共有し,患児とその家族の背景を含めた治療の全体像を把握することが大切である.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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