日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム1: Germline and somatic gene abnormalities in childhood neoplasms
次世代シーケンサーを用いた小児急性骨髄性白血病における網羅的ゲノム解析
柴 徳生
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2016 年 53 巻 5 号 p. 356-364

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抄録

近年の分子生物学の進歩はめざましく,発現アレイ,SNPアレイ,アレイCGH,次世代シーケンサーの登場により,急性骨髄性白血病(AML)の診断技術は飛躍的に進歩している.成人AMLでは,米国のコンソーシアムであるThe Cancer Genome Atlasにより網羅的に遺伝子解析がなされ,主要なゲノム異常はほぼ明らかとなった.その中にはDNMT3ATET2IDH1/2といった成人では予後に影響を及ぼす遺伝子変異が多数同定されているが,これらの変異は小児ではまれである.一方,著者らが小児AML92例で施行したトランスクリプトーム解析では,複数の新規の融合遺伝子を同定するなど,小児と成人ではその病因が異なることが明らかとなってきた.さらに,著者らが解析した網羅的な遺伝子発現の見地から,小児AMLではPRDM16EVI1の高発現は有意に予後不良であることを見出し,正常核型症例やFLT3-ITD陽性例の予後層別化を可能にしつつある.今後,臨床研究と連動した検討がなされ,個々の遺伝子異常や遺伝子異常の組み合わせによる予後との関係が明らかとなり,より的確な予後層別化がなされるとともに,明らかになったゲノム異常から分子病態が解明され,新たな標的に対する有効かつ副作用の少ない分子標的薬剤が開発・臨床応用されることが期待される.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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