日本小児血液・がん学会雑誌
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多職種医療者合同シンポジウム: 小児がんの子どもと家族の治療・検査・処置における意思決定プロセスを支える多職種連携
小児がんと闘う子どもを多職種・多部署で支える取り組み
―協働して行うケアの積み重ねが子どもにもたらすもの―
平田 美佳
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2016 年 53 巻 5 号 p. 403-412

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抄録

小児がんの子どもは,長く辛い治療のプロセスの中で,病気を治すというゴール,そして,病気と闘った体でその後の人生を生きていくという長期的なゴールをめざして闘っている.我々医療者のひとつの使命は,この長い道のりを,少しでも明るく照らし,子どもたちが歩みやすいように道を整えることである.まず最初に,闘う術を与えるため,闘う相手や闘いの内容,ゴールの場所と,そこにはいつ頃辿り着けるのかの見通しを伝えることが大切である.次に,数えきれないほどの苦痛を伴う検査や処置に「嫌だけどやってみよう」と向かっていけるよう,単に検査や処置の説明や説得にとどまらず,ゴールへの向かい方を子どもと考えていくことが重要である.また,この闘いのプロセスで子どもは多くの部署や職種の人たちと出会う.そのため,子どもを専門とする我々のもうひとつの使命は,小児患者に慣れていない部署や職種のスタッフにも子ども中心の視点を伝え,最善の医療やケアが提供できるような風土づくりである.さらに,病院という生活の場が,安全に治療を受けられる場であるだけでなく,子どもの意見や意思が尊重される場,たとえ病気であっても子どもの健康な部分をのばしていける場となり,ひいては病気と闘う力を高め,退院後の生きる力にもつなげていくことが大切である.このように,子どもに関わるすべての職種や部署が協働して関わるケアの積み重ねは,子どもによい結果をもたらす.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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