2016 年 53 巻 5 号 p. 436-447
小児がん経験者の成人期医療移行への準備状況や長期フォローアップ (FU) 支援ツールの周知状況について調査した.方法:研究デザインは,自記式の紙を媒体とした横断研究で,対象はハートリンク共済保険加入者/問い合わせした方またはミルフィーユ小児がんフロンティアーズ登録者で研究に同意した小児がん経験者である.結果:解析対象の小児がん経験者は,男性132人,女性110人で,調査時年齢の中央値は26歳(12歳~47歳) であった.「ある程度~十分わかる」 と答えたのは,病気説明では74%,病期・リスクと治療内容列挙では51~52%,晩期合併症リスクに関しては31%であり,生活習慣注意点や病院に連絡すべき場合についても45~49%であった.一方抗癌剤の種類は50%が,個々の抗癌剤使用や総量は80%が「全くわからない」と答えた.支援ツールについて「ある程度~十分わかる」と答えたのは,治療サマリーで43%,FU手帳の活用では18%,長期FUガイドラインの存在の周知は13%であった.それぞれの理解・周知度に関連していた因子の検討では,年少期発症/小児固形腫瘍(芽腫)や主観的健康度良好なものの認知が低く,高学歴のものは認知が高かった.結論:長期FU支援ツールの認知度は予想以上に低く,小児がん経験者でこれらの支援ツールの周知や活用は不十分である.年少期発症や低学歴では周知に特別の配慮が必要である.