日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
当院で経験した小児急性リンパ性白血病患者における外来通院状況の検討
寺田 和樹植木 英亮小泉 奈美土持 太一郎宮嶋 暁世木川 崇高橋 聡子櫻井 彩子野口 靖五十嵐 俊次角南 勝介
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2017 年 54 巻 1 号 p. 11-14

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抄録

【緒言】小児急性リンパ性白血病(ALL)の5年生存率は約90%まで上昇したが,成長期に受けた各種がん治療により出現する合併症(晩期合併症)が近年問題となっている.晩期合併症は年月を追うごとに罹患率が上昇するため,長期のフォローアップが重要である.しかし,患者や家族に対する晩期合併症の周知は十分でなく,外来通院を自己中断する小児がん患者がみられる.当院で経験した小児ALL患者の外来通院状況について検討した.【方法】1986年から2016年に当院で加療し,追跡可能な小児ALL 107例を後方視的に検討した.最終受診予約日から1年以上受診のない症例を通院継続なし群と定義した.【結果】107例中13例が通院継続なし群に分類され,12例が外来を自己中断していた.治療終了日から10年後の通院継続率が91%であるのに対し,20年後の通院継続率は43%と低値であった.また,最終観察日の年齢による検討では19歳時の通院継続率が93%であるのに対し,30歳時の通院継続率は43%と低値であった.当院の検討では19歳以下で通院を中断した症例が5例みられ,うち2例は治療終了後早期に外来を自己中断していた.【結語】患者,家族に対して治療終了時に長期フォローアップの必要性に関する啓発を行い,治療終了後10年,患者年齢19歳を目安に改めて啓発を行うべきと考えられた.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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