日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム3: Primary immunodeficiency diseases associated with hematopoietic disorders: border between immunodeficiency and bone marrow failure
単一血球減少と小児がんを合併する原発性免疫不全症
笹原 洋二
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2017 年 54 巻 2 号 p. 101-105

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抄録

単一血球減少を伴う原発性免疫不全症として,血小板減少症を伴うWiskott-Aldrich症候群が代表的であり,WAS遺伝子の機能喪失変異によって発症する.血小板減少症の病態について,遺伝性血小板減少症の観点から論じる.WAS遺伝子の恒常的活性化変異は遺伝性好中球減少症の原因の一つである.WAS蛋白の機能は,これまで論じられてきた細胞質・細胞膜における細胞骨格系の制御のみならず,細胞核内で転写調節やゲノム安定性にも広がりを見せている.小児がんを合併する免疫不全症としては,毛細血管拡張性運動失調症関連疾患,WAS,高IgE症候群,分類不能型免疫不全症などがあるが,特にWASにおいてはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の合併が多い.WASが血便や炎症性腸疾患を合併する要因としては,T細胞分化異常および抑制性サイトカインであるIL-10シグナルの機能異常がある.別の免疫不全症であるIL-10シグナル異常症によって乳児期発症炎症性腸疾患を発症することが報告されており,同じくびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫を合併することでWASと共通点がある.

このように原発性免疫不全症の中には小児血液・腫瘍性疾患と分子病態学的に密接に関連している疾患が存在する.WASの分子病態から単一系列の血球分化異常や小児がん合併,炎症性腸疾患の分子病態にまで研究の広がりをみせられるよう,現在病態解析を進めている.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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