2025 年 42 巻 4 号 p. 263-271
要旨:口腔粘膜に発生する病変は多様な肉眼所見を呈するとともに,臨床医は扁平上皮癌やその亜型,あるいは口腔上皮性異形成などの粘膜重層扁平上皮性腫瘍性病変を確定あるいは除外する目的で生検を施行し,病理診断を依頼する場合が多い。しかし,口腔内では炎症性病変のほか,歯原性腫瘍・唾液腺腫瘍などの多様な病変の可能性を考慮しつつ病変の病理診断をおこなう必要がある。本稿では口腔粘膜重層扁平上皮性腫瘍の現状と課題をごく簡単に概説しつつ,実際の病理診断時にこれらの病変との鑑別を要するあるいはピットフォールとなりうる病変を概説する。