2016 年 11 巻 2 号 p. 525-528
【緒言】がん性疼痛に対してタペンタドールを投与したところ発症した過活動型せん妄が,オキシコドンへのスイッチング後,速やかに改善した1例を報告する.【症例】67歳女性.胸腺がん.化学療法経過中にがん性心膜炎となり積極的治療を終了した.胸壁への腫瘍浸潤による体性痛と,背部への放散痛に対してタペンタドール200 mg/日を投与したところ,終日不眠,幻視,思考障害,注意の転導性亢進などが出現.せん妄と診断し,クエチアピンによる対症療法を行ったが改善を認めなかった.やむなくタペンタドールからオキシコドンにオピオイドスイッチングを行ったところ,せん妄は速やかに改善し,疼痛の増悪も認めず在宅療養に移行できた.【考察】タペンタドールのノルアドレナリン再取り込み阻害作用が過活動型せん妄を引き起こした可能性が示唆された.オピオイド誘発性が疑われるせん妄には,スイッチングを検討する必要があると考えられる.