Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Difficulties Faced by Family Caregivers for Terminal Cancer Patient Cessation of Home-based
Kiyomi KawaseNaoko InamuraErika OnukiNami IkenagaSaori FuziyamaChihoko Wada
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2017 Volume 12 Issue 2 Pages 194-202

Details
Abstract

本研究の目的は,積極的治療の終了後に在宅生活を中断したがん患者の家族が抱えていた困難を明らかにすることと,その看護援助を検討することである.対象となる10家族に半構造化面接を実施し,結果を質的帰納的に分析した.結果は,「がん末期症状の認識不足により状況判断ができない」「患者の状態が悪化する中で感じる沈痛な思い」「様々な身体症状の対応を迫られる」「慣れない介護がうまくいかない」「24時間患者と生活を共にする疲労」「重要他者への遠慮によりサポートの機会が得られない」「療養環境を家族主体で整えるのが難しい」の7つに集約された.家族は,介護による精神的・身体的な負担を抱えながら,終末期症状の認識不足や否認的感情から状態悪化時を見据えた療養環境を整えられずにいた.看護師は,家族の状況や価値観を理解したうえで,早期から必要な情報を提供し,療養環境を整える調整を行うことが重要であると示唆された.

緒言

国民の年間死亡者数は今後大幅に増加し,2030年には約40万人の看取りの受け入れ先確保が困難になると言われている1).その中でも,死因第1位であるがんの死亡者数は今後も増加すると考えられており2,3),終末期がん患者の在宅療養を推進する政策4,5)が数多く立てられている.

国民の希望は,終末期がんで食事や呼吸が不自由になってもできるかぎり在宅療養を望む割合は約37%であるのに対し6),実際のがん患者の在宅死亡率はわずか約8%である7).終末期がん患者の在宅療養が困難な理由として,症状コントロールの難しさや社会的サポートの不十分さに加え,家族の介護負担などが指摘されており812),適切なサポートの早期導入と,介護者となる家族のケアは療養継続のために重要だと言える.その一方で,緩和ケアや療養型病棟を有さない当院において,積極的治療終了と共に状態悪化時の療養環境を準備するよう説明されていたものの,在宅生活中に状態が悪化し当院へ緊急入院する患者は少ない.在宅にて状態が悪化する中,生活を共にする家族の負担は大きく,緊急入院に至るまでに家族がどのような困難を抱えていたかを知ることは重要である.しかし,終末期がん患者の在宅療養の実態を調査した先行研究では,カルテ調査や,医療従事者や在宅看取りを行った遺族からのインタビュー816)であり,積極的治療の終了から緊急入院となった期間での家族の体験を充分に反映していない可能性がある.

本研究の目的は,積極的治療の終了時から状態悪化による緊急入院までの間に,家族が抱えていた困難を明らかにし,看護の示唆を得ることとする.

方法

1 対象者

2014年4〜12月に都内のがん専門病院1施設に入院した患者の家族.適格基準は,①積極的治療の終了後に状態悪化により緊急入院した患者の家族,②患者が生存中,③面談可能な精神状態と主治医が判断した家族,また,④想起的バイアスを避けるため,対象は遺族ではなく緊急入院から2週間以内の家族とした.

2 調査方法

面談内容は,①入院となった原因,②在宅にて介護を行う中で体験した困難な出来事,③精神的に苦痛であった出来事,とし,家族の精神的負担を考慮し面談は1回とした.

半構造化面接:インタビューガイドを用いた面談を個室にて実施した.その際,本人の同意を得て面談内容をICレコーダーに録音した.面談は患者のケアに直接関わりを持たない,他チームもしくは他病棟の研究者が実施した.面接調査の精度を高めるため,インタビューガイドを基に模試面談を行い,質的研究を専門とするがん看護専門看護師らに指導を受けた.

記録調査:診療録から①患者の年齢・疾患・入院理由,②対象者の続柄・年齢を調査した.

3 分析方法

個別分析:①ICレコーダーから逐語録を起こし,全体の意味を求めて精読した.②「在宅療養中に抱えていた困難」に関連する記述部分を抽出した.③抽出した文章を,意味内容を損なわないよう簡潔な一文とし,コードとした.

全体分析:①コードを意味内容の類似したもので集め,共通する意味内容を一文で表してサブカテゴリとした.②サブカテゴリを意味内容の類似したもので集め,共通する意味内容を一文で表してカテゴリとした.

なお,分析の真実性を確保するために,サブカテゴリ・カテゴリを定義する度に,逐語録に戻りその妥当性をデータが飽和するまで検討した.全ての過程において,質的研究を専門とした2名(EO, CW)を含むがん専門看護師3名(NI/1),緩和ケア認定看護師1名(NI/2)など,計5名の共同研究者と共に分析を進めた.

4 倫理的配慮

本研究は,国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.該当する家族へ主治医より研究の概要を説明したのち,参加の意思がみられた家族へ研究者より,研究の趣旨・目的・方法,研究協力の任意性と撤回の自由,プライバシーの保護,データの保管と管理および研究終了後のデータの破棄,結果の公表,利益と不利益について,説明同意文書・撤回文書を用いた説明し,同意の署名にて同意を得た.

結果

1 対象者の概要

対象は10家族13名で,概要と面談実施者を表1に示す.面談を依頼した11家族のうち1家族は,精神的負担を理由に面談を拒否された.面談時間は32〜71分であった.全ての患者は担当医より,状態悪化時の療養環境を準備するよう説明されていたが,3名は訪問看護を導入したものの中断しており,残りの7名は在宅療養を導入していなかった.全対象者に逐語録掲示の希望を確認し,希望した1対象者にのみ掲示を行った.

表1 患者・家族の概要

2 家族が抱えていた困難

8名の分析終了時点で概念生成は理論的飽和に至り,その後,2名の分析をおこなったが,新たな概念生成は得られなかった.分析の結果,161のコード,33のサブカテゴリ,7のカテゴリが抽出された(表2).各カテゴリに含まれる具体的な発言を表3に示す.以下,カテゴリは「」,サブカテゴリは〈〉,コードは()で示す.

表2 カテゴリー・サブカテゴリー
表3 カテゴリを得るに至った具体的な発言

「がん末期症状の認識不足により状況判断ができない」に含まれる〈出現し得る症状への知識不足〉〈予想よりも状態悪化が急激であった〉には,がんは臨終に近づくにつれて急激に状態が悪化することや,どのような症状が出現し得るのかということに知識がなかったため,患者の状態悪化という危機的な状況に直面した時の驚きや不安があった.さらに,これらの症状に対して家族なりに判断し応急対処しようとするが,知識が十分でなく〈新たな症状に判断と対応を誤った〉経験をしていた.

「患者の状態が悪化する中で感じる沈痛な思い」には,痛みや呼吸苦などの苦痛を抱える患者と共に生活をすることで〈苦しむ患者を見るのが辛い〉思いや,移動や排泄など自立していたことができなくなってくる姿を目にし〈今までできていたことができなくなる姿を目の当たりにする不安〉を日常的に感じていた.状態が悪くなる患者を目にすることで,〈死が近いと思うと辛い〉と感じると同時に,〈死が迫っていることを受け入れられない〉と,やがて来る患者の死に対して,悲しみや否認の気持ちで揺れ動く体験をしていた.

「様々な身体症状の対応を迫られる」には,〈痛みの対応ができない〉や〈呼吸苦に対応ができない〉など,患者が抱える様々な身体症状に対応しきれないという戸惑いや不安,精神的負担があった.今回対象とした家族は,10家族のうち3家族が訪問看護を導入したものの途中で介入を中断しており,7家族は在宅医療の導入をしていなかった.そのため,患者の身体症状に家族だけで対応しなくてはならない状況であり,対応できなくなったことが緊急入院した直接の原因であった.

「慣れない介護がうまくいかない」には,移動や排泄介助など〈病院で目にした介護方法を実践できない〉体験や,日常生活の援助をした時に痛みや苦痛を訴える患者に対し〈自分が介護をすることで患者に苦痛を与えていると感じる〉と,患者に対し無力感や申し訳なさを感じていた.また,経口摂取量が低下する患者に対し,家族なりに試行錯誤して食事を提供するも食べてもらえず,〈望ましいとされる食事を摂って欲しい気持ちと、強要するのは可哀想だという思いに揺れる〉思いを抱えていた.さらに,医師から勧められたケアを実施しようとしたり,指示のある薬を正しく内服させようとしたりしても,それを患者に受け入れてもらえず,〈よかれと思って指摘したことで患者が苛立ちを表出する〉〈医師の助言通りに介護をしようとするがうまくいかない〉状況を体験していた.

「24時間患者と生活を共にする疲労」では,患者にとって遠慮せずに頼れる存在である家族は,〈患者からの依存が強くなり家族自身の時間や休息時間を持てない〉生活を送り,介護と自分の生活との両立の難しさを感じていた.さらに,働き手である子どもの立場からは,(状態が悪くなることで仕事を急に休まなくてはならず,職場にしわ寄せが行き申し訳なく思う)と,仕事と介護の両立の難しさを感じ,また,高齢の家族からは,(ストレスで自分も膀胱炎になった)や,(心疾患を抱える自分の体調にも不安がある)など〈家族自身が仕事や健康上の問題を抱えている〉中での在宅介護に困難さを感じていた.

「重要他者への遠慮によりサポートの機会が得られない」では,(息子は医師であるが,余計な心配をかけたくないので詳しいことは話せない)と,〈子ども家族に遠慮して大変さを伝えられない〉ことで,得られる可能性のある別世帯家族からのサポートを受けられずにいた.また,(自分が抱える問題を些細なことだと考え,診察中の医師に電話をかけることを申し訳なく思う)気持ちから〈多忙な医師に連絡するのをためらう〉ことで,不安や困難などを相談できずに抱え込んでいた.

「療養環境を家族主体で整えるのが難しい」では,主治医から療養環境の準備を整えるように説明されても,前述した様々な困難を抱えながら生活を送る家族が,患者の迎える最期の場所を準備する難しさを示していた.在宅医療や緩和ケアの情報を得ていても,患者が自分で生活ができている段階では,〈緩和ケアは先のことという考えから準備をしていなかった〉ことや,〈予後を予測できず在宅サービス導入のタイミングが図れなかった〉など,在宅医療を早期に導入する必要性を感じず,患者の望む療養環境を確認する段階においては,(余命や緩和ケアに移る必要性を本人に伝えることでショックを受けるため,本人に伝えられなかった)ことや,(外来で本人と一緒にいる中で、余命や今後起こり得る具体的な症状などを医師に聞くことができなかった)などと,不安を煽る内容を患者本人の前で医師に確認できず,〈患者の気持ちを思い,患者の望む予後を具体的に確認できなかった〉体験をしていた.また,(患者は家に帰ることを望んで退院したが,家族は病院の判断で自宅に帰らされたと感じていた)など,〈自宅で過ごしたい患者と、入院して欲しい家族の思いの不一致〉により,療養環境の準備ができずにいた.しかし,状態悪化時の療養環境を準備したとしても,(急変時に入院する病院が決まっていたが,担当医不在のため診察されなかった)と医療施設間における連携の問題や,(介護保険の申請などに時間がかかり早くできないものかと困惑した)と,簡便でないと感じる医療保険制度活用の手続きの問題などから,〈新たな保険制度活用や療養環境への移行がスムーズにいかなかった〉体験をしていた.また,(患者の治療を受けていた病院の医師にずっと診てもらいたい希望が強く,新たに訪問医を探すことができなかった)ように,信頼し治療を受けて来た医師から離れる不安により,新たな療養環境に移る準備を先送りにしていた.

考察

1 家族が抱えていた困難

家族は,身体症状への対応や介護疲労,精神的苦痛,療養環境の整備など多様な困難を抱えていた.その中でも,「様々な身体症状の対応を迫られる」「患者の状態が悪化する中で感じる沈痛な思い」という体験は全ての家族に共通した.これは,在宅療養を中止した主要因として,患者の状態悪化と家族の精神的な負担を挙げている先行研究9)を支持する結果である.

現在,終末期がん患者の在宅療養をサポートする政策は数多く立てられており4,5),在宅療養の準備を早期から行う重要性が示されている1719).本研究の対象者も,積極的治療の終了と同時に,状態悪化に備えた療養環境を準備するよう説明されていた.しかし結果では,「重要他者への遠慮によりサポートの機会が得られない」「終末期の療養環境を家族主体で整える難しさ」など,療養環境を整えられずに緊急入院に至っていたため,その理由が重要な考察になる.

第1の理由として,状態が悪化するのはまだ先という感覚や,がん終末期症状を知らずに介護を行っていたことが挙げられる.がん患者は非がん患者と異なり死亡前数週間までADL(日常生活動作)が維持されている場合が多く,また,出現する症状も多様であり20,21),家族が状態悪化の時期や症状を事前に予測することは困難である.そして,がん終末期症状の認識不足は,「終末期の療養環境を家族主体で整える難しさ」に含まれる〈緩和ケアは先のことという考えから準備をしていなかった〉や,〈予後を予測できず在宅サービス導入のタイミングが図れなかった〉などとのサブカテゴリの誘因にもなっていた.  

第2の理由として,新たな療養環境を準備する必要性を理解していても,行動できない患者家族の思いが挙げられる.治療の中止や療養の場の変更を説明されると通院していた病院から見捨てられたと絶望感を抱くことがある22)と言われているように,「終末期の療養環境を家族主体で整える難しさ」に含まれる〈治療を受けて来た病院や主治医から離れたくない思い〉により,信頼関係を築いてきた医師から離れることに不安を抱え,行動できずにいた.また,「患者の状態が悪化する中で感じる沈痛な思い」に含まれる,〈死が迫っていることを受け入れられない〉ことで,治療を受けて来た病院から緩和ケアに移ることに気持ちが追いつかず,準備ができずにいた.患者・家族にとって,早期に療養環境を整える必要性は理解しつつも,これらの感情的側面により,現実を受け入れて行動することは容易でないと言える.

第3の理由として,最期の過ごし方に対する意思決定の側面が挙げられる.近年,Advance Care Planning(以下ACP)の重要性が取り上げられており,これが成された患者は望んだ場所で過ごすことができ,患者家族が評価する生活の質も高いとも報告されている2330).しかし実際には,人生の最終段階における医療について55.9%の国民が家族と話し合ったことがないという調査結果が報告されている6).その理想と現実の相違は,「終末期の療養環境を家族主体で整える難しさ」に含まれる〈患者の気持ちを思い,患者の望む予後を具体的に確認できなかった〉〈自宅で過ごしたい患者と入院して欲しい家族の思いの不一致〉という思いも一因と言える.加えて家族は,「患者の状態が悪化する中で感じる沈痛な思い」に含まれる〈苦しむ患者を見るのが辛い〉〈死が迫っていることを受け入れられない〉などの思いを抱えており,日々状態が変化する患者を介護する責任を負いながら,悲しみや逃避,実感が湧かない,希望を持ちたい思いの中で揺れ動き,動揺した状態にあった. そのような状態の中で早期からのACPを行い,患者が最期迎えるための療養環境の準備をすることは難しかった.

2 看護実践への示唆

1)早期からのACPの取り組みに対する援助

希望する療養環境で最期を過ごすには,状態が悪くなる以前からACPを行い状態悪化に備えた準備を整える必要がある2330).しかし,最期まで望みを持ちながら抗がん剤などの積極的治療を受けて来た場合,積極的治療終了直後でも身体症状の悪化が現れる以前に,最期過ごし方について確認し,積極的に準備を始めることは家族の心情的に容易でない.さらに,患者家族と治療のゴールを話す障害として,患者家族の予後への知識不足や話し合い能力の不十分さなども挙げられている31).看護師は,患者家族間の思いや理解度を確認し,必要となれば代弁者や,他職種との調整役を担う必要がある.医師,ソーシャルワーカーなどの医療スタッフとの間で患者家族の情報を共有し,サポート体制を整えることで,望むべく最期を迎える支援をする必要がある.

2)状態変化を見据えたケア指導

看取りを行った家族の満足度は高くその経験はグリーフケアにも繫がるが32,33),患者が在宅療養を望んだとしても家族への支援や症状コントロール不十分な場合は,自宅で最期を迎えるのは難しい34).家族への支援として,家族の行うケアが専門家によって高く評価され,また,ケアの内容の妥当性かが専門家によって保証されていること,指導内容かが具体的であること,が必要とされている35).本研究結果からも,介護や病状に対する知識が不十分でありながら患者と生活を共にすることで,家族の大きな負担になることが明らかになった.積極的治療が終了し,状態の悪化が予想される患者の家族への支援として,入院中であれば早期からの退院指導と日常生活のケアを家族と共に行いケアに慣れる機会を作ること,外出外泊を進め入院中と在宅療養開始後のギャップを最小限にするための機会作りが必要である.また,外来通院中では生活の様子を聞き必要な介護方法を指導するだけでなく,家族の苦労を労い,思いを支持し,介護に対し肯定感を持てるような関わりが重要だと言える.

3)切れ目のない施設間を超えたシームレスなフォロー体制の構築

診断と同時に始める緩和ケアが推奨され,ケアは診断,治療,在宅医療など様々な場面で切れ間なく行われる事が重要であるとされている36).積極的治療ができないと診断され,治療を受けてきた医師に最期まで診てもらうことを望みながら,療養環境を移り変わらなくてはならない状況は不安を生む.とくに,がん治療専門病院単施設で行った本研究では,施設の特徴として積極的治療終了後は他施設や在宅療養に患者を紹介する必要があり,療養環境を整えるための家族の抱える困難は強かったと言える.看護師は,患者家族の不安を軽減するために,患者家族の思いに寄り添いながら,病棟・外来・在宅など多施設という枠を超えた情報共有を行う必要がある.必要に応じて患者家族を交えた多施設・他職種での退院前カンファレンスなどを行うことで,切れ目のないケアを実感できるだろう.

家族の抱える困難は多様である.看護師は,日頃の関わりの中で患者家族の思いに寄り添い,信頼関係を築くこと,家族関係や家族の置かれている状況をアセスメントしたうえで,必要とされている情報を提供すること,さらに,他職種・多施設との調整役となることが必要とされる.これらの早期介入により,在宅療養中の患者と家族の苦痛緩和や,重症化による緊急入院の予防,そして,患者家族が望む最期を過ごす支援に繫がることが期待できる.

本研究の限界として,がん専門病院1施設での調査であり,その施設が有する特徴の影響を受けて対象者や分析内容に偏りが生じている可能性を否定できない.

結論

積極的治療終了後に在宅生活を中断したがん患者の家族が抱える困難について,緊急入院した直後の家族の言葉から明らかになった. 家族は,がん末期症状についての知識不足がありながら,状態が悪化する患者と共に生活を送り,精神的・身体的に多くの負担を抱えていた.さらに,最期を過ごす場所を患者と話し合い,サポートや療養環境の準備をするキーパーソンとなることを困難としていた.看護師は,積極的治療終了を診断された患者家族に対して,早期からACP支援や個々のニーズに合わせた指導を行い,病棟・外来・在宅医療や緩和ケア病棟など他職種や多施設との途切れのないケアを調整する必要があると言える.

今後は,施設数や対象者を増やして,より汎用性の理論生成を目指す必要がある.そして,積極的治療終了後,状態悪化を見据えた療養環境準備の困難さに焦点を絞った研究を行い,支援方法をシステム化することが今後の課題である.

本研究から得られる知見は,積極的治療終了後から新たな療養環境に移行する段階の患者家族が必要とする支援を検討し,また,終末期がん患者の緊急入院数を減らし,患者家族が望む最期の生活を整えるための一助になると考える.

References
 
© 2017 by Japanese Society for Palliative Medicine
feedback
Top