【背景】がん患者の疼痛には非がん痛が含まれることがあり,心身症傾向を伴う場合,その評価や介入は困難となる.進行がん患者に生じた心身症傾向を有する筋筋膜性疼痛に対し,心身医学的アプローチが奏功した一例を報告する.【症例】症例は70歳代男性で,夜間に出現する上背部の発作痛が問題となっていた.(i)良好な治療関係の構築を基盤に,(ii)心身両面からの評価を行い,失体感症を踏まえた病態仮説を医療者間で共有した.(iii)アームチェアサインを通じて無自覚の持続的上背部筋緊張の存在が患者と共有され,心理的緊張と身体症状の関連について患者自身が洞察するに至った.(iv)漸進的筋弛緩法の介入が可能となり,セルフケア行動が促進され,発作痛は軽減した.【結論】身体診察を媒介とした心身医学的アプローチは,症状のセルフケアを引き出す有効な枠組みとなり得る.