主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の炎症とその周辺
回次: 16
開催地: 兵庫県
開催日: 1998/01/23 - 1998/01/24
p. 76-77
まず,最初のテーマは虚血—再灌流における細胞障害の機序についてであるが,西田先生には,虚血—再灌流に伴う好中球障害ついて,座長の立場からご解説いただいた。田中先生は,妊娠ラットの片側子宮胎盤循環を30分間虚血する実験的IUGRモデルを用い,虚血後低灌流が起こること,それには活性酸素および白血球が関与していることを示された。村松先生は,新生仔ラット総頸動脈結紮後低酸素負荷を行う実験系において,脳内免疫細胞で誘導されるiNOSに対して,その阻害剤の投与により脳損傷が軽減され低酸素性虚血性脳障害がNOを介した炎症性変化によることを示唆された。長田先生は新生仔ラット頸動脈結紮後の低酸素負荷の時間と繰り返しの影響を検討され,低酸素負荷の時間が長いほど,また,間欠負荷群は連続負荷群よりも高度な障害をきたすことを明らかにされた。その際NOの発生およびiNOSmRNA発現が,障害の程度と相関することから低酸素性虚血性脳障害におけるNOの関与を示唆された。
臨床的には虚血による細胞障害と再灌流による細胞障害を区別することは困難であるが,この両者を分けて考えておくことは大切と思われる。なぜならば,虚血による細胞障害は治療することが不可能であっても,再灌流による細胞障害は防ぐことが可能かもしれないからである。田中先生のIUGRの実験系は,虚血—再灌流によって血管内皮が障害されて虚血後低灌流を生じ,それが長期間持続することによってIUGRが発生すると考えられ,虚血後低灌流の影臀,すなわち再灌流障害をみるのによい実験系であると考えられる。