主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 2
開催地: 東京都
開催日: 1984/01/21
p. 74-84
I はじめに
Computed tomography(CT)や超音波断層法(US)の発達により,中枢神経系奇形の一部は生存中に診断され,さらに胎内診断が可能となってきた。CTもUSも頭蓋内構造をimageとしてとらえるために,診断限界はあるが,image診断上,中枢神経系の形態学的特徴およびその形態学的発達を知っておくことは,極めて重要である。
一方,一般に中枢神経系奇形は,発生学的に脳形成の早期の異常ほど著明である。神経胚・神経管形成異常は閉鎖不全症として形の異常として現れ,腹側誘導の異常は全前脳胞症のように頭蓋内の構造の異常として認められる。細胞増生の異常は巨大脳症や小脳症のように,大きさの異常として現れる。また,細胞移動の異常は無脳回症のように,構造あるいは大きさの異常として認められることがある。
最近,胎児の水頭症の治療が子宮内で施行され~4),賛否両論がある。中枢神経系奇形の子宮内治療の前に,水頭症の予後は脳合併病変によって異なるために,まず水頭症の原因鑑別をすることが重要であり,さらに子宮内での病変の進行性を知ることも少なからず大切である。
今回,胎内診断された胎児の中枢神経系奇形と新生児奇形例を病理学的に比較して,奇形脳の発達ないし病変進行について述べたい。