主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 5
開催地: 神奈川県
開催日: 1987/01/17
p. 40-48
I はじめに
胎児診断は臓器別診断の時代に入った。その中でも胎児心疾患の診断は速やかに解決されるべき運命にある。その理由の一つとして,成熟婦人1人あたりの出生児数の低下による胎児一人ひとりに対する社会的または個人的期待の増大と,周産期死亡率の低下による心疾患児の周産期死亡の相対的増加がある。もう一方の理由として新生児心疾患に対する内科的・外科的治療の長足の進歩がみられ,胎児期に診断することにより,より良い予後が期待できることがある。また,小児心臓病の超音波装置と診断のための知識が,少しの改造をもって利用できることも大きな武器となり得る。
この研究は,上記の社会的・医療的背景下に現時点における胎児心疾患胎内診断の現況および効率,診断のための超音波像のラベリング,そして,先天性心疾患母体から同系心疾患児発生の頻度を求めることを目的とした。
研究組織は,厚生省循環器病委託研究(59-公-7)中野班であり,データを集めた施設は,旭川医科大学,東京大学医学部,順天堂大学医学部,国立循環器病センター,鳥取大学医学部および九州大学医学部の6施設である(以下,6施設と記す)1~3)。