抄録
本研究の目的は脳卒中片麻痺者に対し,一般的によく使われている移乗用ベッド手すりを使用しての移乗動作の問題点の検討をおこない,転倒につながりやすい諸動作を明確にすることである.方法は3次元動作解析装置を使用して,比較的,転倒率の高い麻痺側肢まわりの移乗動作の計測をおこなった.移乗動作を立ち上がり,回転,座り込みに相別化して分析した結果,立ち上がり時と座り込み時では手すりを後下方に強く引っ張りながら,その反作用として足部で前方に強くつっぱっていた.回転時では左右合成圧力中心点の移動軌跡長が増加しやすく,とくに麻痺側下肢の運動機能が低下している片麻痺者ほど移動変化の動揺が大きかった.今回,一般的によく使われている手すりは転倒につながりやすい諸動作がいくつか推察されたことから,片麻痺者の動作の安全性を十分に配慮できているとは言いがたかった.