抄録
装具による足関節の背屈制限は,術後の固定や保存療法で一般に用いられている.昇段動作は日常生活で頻度が高く,身体への高い力学的ストレスが危惧されるにもかかわらず,背屈制限下での昇段動作解析に関する報告は見当たらない.本研究は短下肢装具による背屈制限下での昇段動作で,制限側下肢立脚期に着目し,健常若年者を被験者として解析を行った.その結果,足関節背屈制限は体幹屈曲および制限側の膝関節伸展角度の増加で補完され,制限側の高い股関節伸展モーメントと膝関節屈曲モーメントの産生を必要とする代償動作への変化が示された.そのため,背屈制限は足関節に安静を与える反面,背屈制限を代償した動作による昇段動作では,股関節および膝関節の力学的ストレスを増加させる可能性が考えられた.