2005 年 10 巻 2 号 p. 76-84
福島県南会津郡T町に在住する40〜70代の女性計40名を対象にして, 超音波法による踵骨骨密度測定(stiffness, SOS, BUA)を行い, 同時に早朝絶食空腹時下における採血により, ACTH, コルチゾール, カテコールアミン3分画, エストラジオール, プロゲステロン, PTH, 総コレステロール, 中性脂肪, HDL及び, 骨吸収マーカーNTx, 骨形成マーカーBAP, 加えて骨量減少と動脈硬化の双方に影響するといわれるサイトカイン(IL-1β, TNF-α, IL-6)の測定を行った.並行して循環動態機能付き血圧計によって動脈硬化指数(ASI)の測定を行った.これらを年代ごとに比較すると, 超音波3指標では40代女性は20代とほとんど変わりのない平均値を示したが, 50代以降急速に低下し, 70代では骨粗鬆症危険閾値以下の低骨密度を示した.NTx, BAPとも40代では他の年代と比較して低値を示したが50代以降上昇し, 70代まで高回転型の骨量減少を示した.全ての年代を通じてはNTx, BAPともにエストロゲンの減少によって説明された.しかし, 閉経以前の女性ではNTxにはコルチゾールが説明変数となり, 閉経後女性ではIL-6が関与した.動脈硬化を表すASIは特に高齢者でアドレナリンによって有意に説明された.それぞれの年代でサイトカインは有意な説明変数にはならなかった.上記から, 更年期女性ではエストロゲンの減少だけではなく, なんらかの精神的なストレスが骨吸収を促進し, 閉経後女性ではストレスに立ち向かおうとする姿勢が動脈硬化を促進する可能性が示された.対象地域は過疎の雪深い町であり, 高齢核家族も多い.特に高齢核家族に対する地域的な援助が高齢者のストレスを減らし, 動脈硬化を予防する要因になることを示唆した.