抄録
ラン色細菌光化学系II(系II)酸素発生系に結合しているPsbUは、植物の系IIのPsbPあるいはPsbQと機能的に相同であると考えられてきた。しかし、我々はラン色細菌の系IIにPsbP、PsbQを見出した[Thornton et al. (2004) Plant Cell 16, 2164]。よって、PsbUは植物のPsbP、PsbQとは異なる機能を有すると考えられる。そこで、Synechocystis 6803のpsbU欠失変異体(ΔPsbU)を作成し、PsbUの機能を分析した。本研究ではとくに酸素発生系と関わりの深いイオンとの関係を検証した。
ΔPsbUは、Ca2+欠乏下では野生株(WT)と同様に増殖したが、Cl-欠乏下では増殖が著しく抑えられた。単離したチラコイド膜での酸素発生活性は、30mM Cl-存在下に比べ、-Cl-でWTでは約40%の活性低下が見られ、ΔPsbUでは活性がほとんど見られなかった。30mM NO3-存在下では、ΔPsbUチラコイド膜は30mM Cl-存在下の60%の活性を示した。SO42-は、WTでもΔPsbUでも、影響を示さなかった。チラコイド膜の酸素発生に対するこれら陰イオンの効果は、植物の場合とは大きく異なるものである。これらの結果を基に、PsbUは植物PsbPやPsbQとは異なり、Cl-の結合には関与していないであろう、と結論づけた。