抄録
マメ科植物と根粒菌の共生窒素固定は、相互の複雑なシグナルのやり取りによって成立する。ミヤコグサはマメ科のモデルとしてゲノム解析が進行中であり、その情報を利用して根粒菌からのシグナル受容や根粒形成初期のシグナル伝達の鍵となるいくつかの遺伝子が単離されている。しかしながら、根粒形成と共生窒素固定成立のメカニズムの全容は、未だ解明されていない。SAGE法 (Asamizu et al. 2005) やcDNAアレイ (Kouchi et al. 2004) による根粒形成過程のトランスクリプトーム解析により、根粒形成初期から窒素固定能を持つ後期の根粒で発現誘導される転写因子が20種類見出された。本研究では、これらの転写因子の根粒形成に果たす役割を調べるため、いくつかのアプローチにより機能解析を進めている。下流で発現制御を受ける遺伝子群を明らかにするため、毛状根形質転換により作出した転写因子過剰発現根粒を用いたアレイ実験が進行中である。また、ミヤコグサTILLING系統のスクリーニングを進めており、これまでに1種類の転写因子について根粒形成過程に異常を示す変異体が得られている。エチレンやジャスモン酸の根粒菌感染制御に関する役割が指摘されているが、本研究では7種類のAP2/ERFドメインを持つ転写因子に着目して、詳細な発現解析を進めている。