抄録
カンペステロール (CR) からブラシノライドに至るブラシノステロイド生合成経路では、カンペスタノール (CN) を経由する経路がこれまで提唱されてきた。しかしC-22位水酸化酵素CYP90B1および、C-23位水酸化酵素CYP90C1, 90D1の基質特異性の解析から、早期にC-22位が水酸化される経路、すなわちCNを経由しない新規経路の存在が示唆された。5α還元酵素であるDET2が (24R)-ergost-4-en-3-one (4-en-3-one) を基質とすることは既に報告されているが、今回新たに22-OH-4-en-3-oneと22,23-diOH-4-en-3-oneも基質となることを明らかにした。また、我々はCYP90A1がC-3位酸化/異性化反応を触媒することを明らかにした。CYP90A1はCRを基質としないのに対し、22-OH-CRと22,23-diOH-CRは基質となり、基質特異性を調べた結果、22-OH-CRは22,23-diOH-CRに比べkcat/Km値が13倍高いことがわかった。CYP90B1の基質特異性と考え合わせると、CRから22-OH-CRを経て22-OH-4-en-3-oneへと反応する経路が主流であることが強く示唆された。DET2の基質特異性の解析、CYP90A1とは異なるCRのC-3位酸化/異性化酵素についても報告する予定である。