抄録
植物が備えている耐塩性、耐乾性機構の一つとして、グリシンベタイン(ベタイン)の蓄積がある。我々はこれまでに、ベタイン蓄積植物であるオオムギでは、ベタイン合成の最終段階を触媒するベタインアルデヒド脱水素酵素BADH(betaine aldehyde dehydrogenase)が、ペルオキシソーム型(BBD1)とサイトゾル型(BBD2)の二種類存在することを見いだした。
そこで本稿では、この二つのBADHがどのような機能を持つかを調べるために、BBD1およびBBD2について酵素学的解析を行った。その結果、BBD2のベタインアルデヒドに対する親和性はBBD1に比べて約1000倍高いことが明らかとなった。また、他のアルデヒドとして4-アミノブチルアルデヒド、3-アミノプロピオンアルデヒドについても調査したところ、BBD1はこれらのアルデヒドを基質とすることが示され、その親和性はBBD2と同程度であった。
ベタインアルデヒドに対する親和性の差は、オオムギでは、ベタイン合成は主にサイトゾル型BADHであるBBD2が担っていることを示唆しており、オオムギは葉緑体でベタインが合成されるアカザ科植物とは異なり、サイトゾルでベタインが合成されると考えられた。