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珪藻の光化学系I(PS I)では、二種類の周辺アンテナFCP(fucoxanthin-Chl binding protein) I-1とFCP I-2がコア部分(PS I-Core)を取り巻いている。励起エネルギー移動過程を明らかにするために、珪藻C. gracillisから単離したFCP-PS I超複合体、PS I-Coreのみ、FCP I-1およびFCP I-2複合体のみの合計4種類の標品で、フェムト秒時間分解蛍光スペクトルをアップコンバージョン法とストリークカメラ法により測定した。エネルギー移動の速度が遅くなる極低温17 Kで測定を行い、結果を5つの指数関数の和としてglobal解析した。FCP内にのみ存在するChl cを460 nmで選択的に励起した場合と430 nmによりChl aを励起したときに観測される時定数5 psの主要蛍光減衰成分がみられない。このことからPSIコア内部のエネルギー移動は5 ps程度で起こると推測された。460 nm励起では、430 nm励起時に見られなかった0.86 ps と14 psの2成分が観測された。これらは、二種類のエネルギー伝達経路(FCP I-1⇒コア、FCP I-2⇒コア)を各々反映すると考えられる。これらの結果をもとにモデルを立て、シミュレーションを行い珪藻のPS Iでのエネルギー伝達経路と速度を明らかにした。