抄録
シアノバクテリアには、ほぼ全長がLuxR型のDNA結合モチーフから成る低分子量転写因子が高度に保存され、それらはC末端に特徴的な3つのCys残基を保持している。我々はSynechocystis sp. PCC 6803のLuxR型低分子量転写因子PedRの二量体が、一連の強光応答性遺伝子の発現を、光合成電子伝達活性に依存して調節することを明らかにした。この調節機構を解明するため、シアノバクテリア間で保存性の高いアミノ酸残基のアラニン置換株を作製したところ、Cys80が二量体形成に必須であることを見出した。しかし、それ以外のアミノ酸置換株の中で、標的遺伝子の強光応答性が失われているものはなかった。一方でPull down法により、PedRと相互作用する因子を探索したところ、チオレドキシンが同定され、さらにin vitro でチオレドキシンがPedRを還元することが確認された。また、チオレドキシンに還元力を供給するフェレドキシン-チオレドキシン還元酵素、またはNADPH-チオレドキシン還元酵素の遺伝子破壊株では、強光下におけるPedRの構造変化および標的遺伝子の発現変化が見られなくなったことから、in vivo においてもPedRがチオレドキシンから還元力を得ていることが示唆された。今後は、光合成電子伝達活性の検知に関わるCys残基を同定し、PedRの活性調節機構を解明する予定である。