日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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海洋性珪藻の塩応答遺伝子群の探索
*神田 拓也田中 祐二松田 祐介
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p. 0509

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抄録
海洋性珪藻類は地球上の一次生産の25%を担うが、汽水域にも適応し、広範な塩応答性を有する。海洋表層の塩濃度は気候、地理、季節など様々な要因により変化するが、珪藻等海洋一次生産者の低塩応答機構については報告例が無い。本研究では、海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutumを用いて、低塩応答を転写レベルで調査した。通常海水 (0.5M[Na+]) で生育した細胞を低塩環境 (0.1M[Na+]) へ移し、生育速度から低塩順化初期及び後期に類別した。低塩処理直後を含めた各過程からRNAを調整し、cDNA-amplyfied fragment length polymorphism (cDNA-AFLP)法により半網羅的なトランスクリプトーム解析を行った。その結果、74のcDNA断片で低塩応答性が確認された。アスコルビン酸生合成経路のGDP-mannose 3’ 5'-epimerase、典型的ストレス応答性遺伝子であるHeat shock protein、また数種のNa+ transporterが強い塩応答性を示した。アスコルビン酸生合成経路、活性酸素除去酵素の多くも低塩環境下でmRNA蓄積量の増加が見られたことから、P. tricornutumは低塩順化過程で酸化ストレスを受けることが示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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