抄録
NPPには6つのアイソザイム遺伝子の存在が確認されている。我々は、これまでにNPP1、2、6を強発現するイネ細胞からそれぞれのアイソザイムを精製し、それらの諸性質を解析した。NPP1、6は、デンプン生合成のグルコース供与体であるADP-グルコースをAMPとG1Pに加水分解する糖ヌクレオチド分解型であり、NPP2はADPなどのヌクレオチドを主な基質とするヌクレオチド分解型であった。加えて、NPP1、2、6はすべて約70 kDa のサブユニットからなるホモオリゴマーを形成し、Con Aに認識されるN-結合型糖鎖を有する糖タンパク質であることがわかった。さらに、NPP-GFP融合遺伝子をイネ細胞に導入、発現させたところ、NPPアイソザイムの局在は葉緑体であることが見いだされた。本報告では、NPP1機能破壊体およびNPP1強発現体を用いて、表現型の観察、デンプン蓄積量および遊離糖の定量を試みた。NPP1強発現体ではデンプン蓄積量の減少、遊離糖の増加、幼根成長の促進が観察された。また、NPP1、NPP6の機能破壊体では、種子重量の増加すなわちデンプン蓄積量の増加が観察された。このことからADP‐グルコース分解型NPPはイネにおいて葉緑体でのデンプンの生合成を制御し、発芽期において根成長を調節する働きがあると示唆された。