抄録
陸上植物の葉の温度(葉温)は周囲の気温ばかりでなく、太陽からの輻射熱や蒸散に伴う気化熱などの要因により決定される。昼間にほとんど蒸散を行わないCrassulascean acid metabolism型光合成を行う植物(CAM植物)の葉温は、輻射熱で極めて高温となる可能性が高い。本研究ではCAM植物(コダカラベンケイソウ:Kalanchoe daigremontiana)と、C3植物(ケナフ:Hybiscus cannabinus)を用いて夏期日中の葉温を測定した。C3植物の葉温の変化は気温とほぼ等しかったのに対し、CAM植物の葉温は、気温より非常に高くなり14.9℃上回った。この結果は気温が30℃以上になる夏期には葉温が45℃以上になることを示唆していた。高い葉温がCAM植物の光合成に与える影響を検討するため、人工気象室中で高温を再現し、光合成速度を測定した。その結果、36℃で光合成の誘導期間が長くなり、40℃で光合成が著しく低下することを明かにした。現在、さらに光合成活性を測定中である。