抄録
細胞骨格繊維の一種である中間径フィラメント(IF)に関して、植物細胞においてはIFを構成するタンパク質の遺伝子はクローニングされておらず、IFが存在するか否かは確定していない。本研究では、植物細胞のIFタンパク質の遺伝子を同定することを目的として、まずヒトのIFタンパク質の遺伝子と推定アミノ酸配列レベルで相同性を持つシロイヌナズナの9種類の遺伝子を全ゲノムのデータベースより選び、GFPとの融合タンパク質を発現させた形質転換タバコBY-2細胞を用いて、それらのうちの7種類の遺伝子のコードするタンパク質について細胞内局在を調べた。その結果、それらのうちの1種類のタンパク質が間期の細胞では核周辺の細胞質に繊維状の構造をとることが分かった。これらの繊維状の構造物は、間接蛍光抗体法により染色した微小管あるいはアクチンフィラメントとは異なる場所にも見られた。また、分裂期の細胞では細胞板や紡錘体の近辺にシグナルが見られ、微小管と共局在する可能性が示唆された。シロイヌナズナの芽生えにおいてこのタンパク質をコードする遺伝子の発現の組織特異性を調べるためプロモーターGUS解析を行った結果、根端、茎頂、葉脈、葉の排水組織で発現が見られた。今後このタンパク質が植物細胞内で形成する繊維状の構造物がIFであるか否かについて微細構造レベルでの研究により明らかにしていく必要があると考えられる。