抄録
ホウ素は高等植物の微量必須元素であり細胞壁ペクチンを架橋することによって細胞壁の構造を安定化させる働きがあると考えられている。演者はこれまでに低ホウ素条件下(5 μM)で成長可能なギンドロ培養細胞系(1/20-B)を確立し、ホウ素欠乏耐性機構について研究を行ってきた。その結果、1/20-B細胞ではペクチン間のカルシウム架橋形成に必要なペクチンメチルエステラーゼ(PME)活性の上昇、及びこの培養細胞からRT-PCRにより単離したpaPME1遺伝子の発現増加が観察された。これらの活性や遺伝子発現は細胞をホウ素が十分に存在する培地に移植すると低下することからPME活性はホウ素によって調節を受け、ホウ素欠乏耐性に関与している可能性が示唆された。しかし、培養開始後2日目に見られる特徴的なPME活性の上昇に対応するpaPME1遺伝子の発現増加が見られなかったことから他のPME遺伝子の関与が考えられた。今回、継代後2日目の1/20-B細胞からRT-PCRにより新たなPMEのcDNA (paPME2)を単離したので報告する。
単離したcDNAは約1,200 bpでポプラのPME2と相同性が高く約90%のホモロジーを示した。一方、paPME1とは約75%のホモロジーを示した。この結果は培養2日目の活性上昇にはpaPME1ではなくpaPME2の誘導が関与している可能性を示唆している。