抄録
フラボノイドはその強力な抗酸化活性から我々人類にとって有用な高機能物質として注目されているが、植物体内においても、紫外線防護物質や花色などの有用機能を発揮することが知られている。植物細胞内においては、フラボノイドの基本骨格C6-C3-C6生合成は、細胞質領域の小胞体表面で進行すると考えられているが、多くのフラボノイド最終産物は液胞に蓄積される。このことは、フラボノイドが植物細胞内で輸送されることを示唆しているが、その輸送機構についてはほとんど明らかにされていない。モデル植物シロイヌナズナにおいて、種子でのみ生合成・蓄積するフラボノイドの一種であるプロアントシアニジンに関する細胞内輸送経路に関する研究が進められており、膜局在型フラボノイドトランスポーターTT12やサイトゾル局在型のグルタチオントランスフェラーゼ様タンパク質TT19などがフラボノイド輸送に関与すると考えられている。本研究では、これらのフラボノイド変異体を用いて、未熟種子ステージにおける代謝産物解析などを行い、得られた生化学的知見について報告する。