抄録
地上に進出し現在繁栄している植物は1gという重力に対する抵抗性(抗重力抵抗性)を獲得している。そして、そのシグナルやストレスは植物の成長制御や形態形成にも利用されている。植物と重力との関係は多くの植物で調べられているが、個々の細胞が重力(特に過重力)ストレスにどのように応答し順応するかという研究例は少ない。本研究では懸濁培養または寒天培養で得られたトマトとソラマメのカルス細胞を用いて、それらの成長や代謝活性に対する遠心過重力(100g)の影響を調べた。なお、培養にはMS塩とショ糖を含む1%寒天培地を用い、対照実験(1g)としては同じ培地条件で静置培養した細胞を用いた。カルス細胞の成長は1g条件に比べて100g条件で強く阻害された。この間、細胞壁合成が阻害され、可溶性糖濃度やグルタチオンの濃度が一過的に増加し、解糖系酵素や呼吸系活性の指標も増加した。100g条件でカルス細胞を4日間以上連続培養すると、細胞の成長能力の回復がみられた。このとき、細胞壁量が有意に増加することもわかった。これらから、植物細胞の過重力応答には、初期の過重力に対するストレス応答過程とその後の抵抗性獲得過程の2段階があることが示された。