日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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補償作用抑制能を持つxs2の機能解析 ~ サリチル酸応答と補償作用の関係について
*藤倉 潮堀口 吾朗出村 拓塚谷 裕一
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p. 0258

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抄録

補償作用とは、様々な遺伝的異常により葉に含まれる細胞の数が減少した際に、個々の細胞が大型化する現象である。このことは葉の形態形成において、細胞増殖と細胞伸長との間に何らかの相互作用が存在することを示唆しているが、その実態は明らかになっていない。我々はこれまでに、補償作用誘導時における細胞肥大の実態の解明を目的として、細胞伸長に特異的な欠損を示すxs変異株を単離し、顕著な補償作用を示すan3変異株との間で遺伝学的解析を行なってきた。その結果、いくつかのxs変異がan3に見られる細胞肥大を抑制することを見いだしている。今回、最も顕著な補償作用抑制能が確認されたxs2の原因遺伝子のクローニングを試みた。その結果、第一染色体上に座乗するカチオン輸送関連遺伝子のエキソン領域内に、8塩基の欠損を見いだした。また、xs2はその表現型が恒常的な病害応答を示す変異株に酷似していたことから、サリチル酸(SA)応答に関わる遺伝子群の発現を調べたところ、xs2ではWTに比べて顕著に発現が上昇していることを見いだした。またSA処理によって、an3に見られる細胞肥大が顕著に抑制されることを見いだした。以上のことから、xs2における補償作用抑制能はSA情報伝達系と関連していることが示唆された。本発表では以上の結果を基に、xs2、SAと補償作用の関係について議論したい。

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© 2010 日本植物生理学会
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