抄録
多くの植物細胞は生長過程においてDNA複製と細胞分裂が交互に起きる細胞分裂周期を経た後、細胞分裂を伴わずDNA複製のみ起こる核内倍加周期へと移行する。こうした移行は細胞が最終的な分化や伸長生長を開始する時期に起きることが知られ、植物の生長を制御する重要な過程であるが、この移行過程がどのように制御されているかは分かっていない。最近、我々は核に局在するHIGH PLOIDY2 (HPY2)というSUMO (Small ubiquitin-like modifier) E3 ligaseがシロイナズナのメリステムにおいて核内倍加周期への移行を抑制していることを解明した。SUMOはE3 ligaseを通じて種々の基質タンパクと結合しその機能を調節する。また、HPY2はメリステムにおいて発現しており、この機能が失われたhpy2変異体では細胞分裂周期の活性が低く、メリステム細胞が通常よりも早く核内倍加周期に移行してしまうため、メリステムが維持されず植物体全体が極度に矮小化してしまう。さらには、HPY2の機能はメリステムパターン形成に関与する転写因子PLETHORA1 (PLT1)及びPLT2の制御下にあることから、オーキシン-PLTによる細胞周期の転換及びメリステムの維持過程においてHPY2によるSUMO 修飾制御が重要な役割を持つことが明らかとなった。