抄録
ミトコンドリアのDNAはタンパク質とともに三次元的に組織化されたミトコンドリア核様体として存在している。核様体内で、DNAは非常に効率よく圧縮されながらも、ゲノム機能を適切に発揮できるような様式で組織化されている。しかし、詳細な組織化の様相は明らかになっていない。本研究ではミトコンドリア核様体に細胞核クロマチンで見られるヌクレオソームのような基本構造が存在するかに注目し、ヌクレアーゼ感受性を指標に解析を進めた。タバコ培養細胞BY-2から単離したミトコンドリア核様体をmicrococcal nuclease (MNase)で処理すると、細胞核を処理した際にみられるのとよく似たDNAラダーが観察され、ミトコンドリア核様体にもヌクレオソームのような繰り返し構造が存在する可能性が示唆された。そこでSucrose密度勾配遠心によりミトコンドリア核様体のMNase断片を分離し、各フラクションのタンパク質の構成を分析した。最小サイズ(約75 bp)の断片を含むフラクションには、細胞核のヒストンとは異なる複数のタンパク質が含まれていることが明らかになった。このことから、タバコのミトコンドリア核様体では、細胞核とは異なる独自のタンパク質を利用して、細胞核ヌクレオソームのような繰り返し構造を形作っていることが示唆される。現在、電子顕微鏡を用いた核様体/MNase断片の微細構造の観察を進めている。