日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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酢酸菌セルラーゼ欠損変異株が分泌するねじれたセルロース様繊維の特徴
*中井 朋則辻 暁今井 友也杉山 淳司榊原 斉大岩 和弘峰雪 芳宣
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p. 0578

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抄録
セルラーゼは植物細胞壁の主成分であるセルロースを分解する酵素であるが、ある種のセルラーゼはセルロース生合成に不可欠であることが知られている。我々は以前、菌体外にセルロースを排出する酢酸菌(Gluconacetobacter xylinum)BPR2001株のセルラーゼ欠損変異株F2-2が排出する繊維状物質は、野生株が分泌するセルロース繊維に比べ、極度にねじれていることを報告した。そこで、本研究では、この繊維状物質について検討した。まず、培養液を遠心して得た沈殿から菌体を除去するために、沈殿物を0.2 M NaOHで処理した後、蒸留水で洗浄し、最終的に得られたアルカリ不溶性物質を乾燥させて試料とした。電子顕微鏡観察から、この試料には極度にねじれた繊維が含まれることが分かった。この試料を13C NMR及びFT-IRで解析した結果、このアルカリ不溶性物質に結晶性の低いセルロースIIが含まれていることが分かった。F2-2株をセルラーゼの遺伝子により補完したF2-2(pSA-CMCase/k)株は、野生株と同様に培地表面にセルロースペリクルを合成した。このペリクルの13C NMR及びFT-IR解析では、セルロースは野生株と同じ結晶性の高いセルロースIであった。これらの結果は、セルラーゼが結晶化セルロースを増加させるようにセルロース生合成に関与していることを示唆する。
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© 2010 日本植物生理学会
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