抄録
シロイヌナズナの種子成熟過程において、葉緑体で合成された脂肪酸からトリアシルグリセロール(TAG)を合成する代謝は小胞体で起こり、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)を始めとするTAG合成系の遺伝子は、種子特異的AP2型転写因子ASML1/WRI1の標的である脂肪酸合成系の遺伝子群よりも後期に強く発現する。TAG合成系遺伝子と類似の発現パターンを示す転写因子遺伝子を公開マイクロアレイデータから抽出した。それらのcDNAを35Sプロモーター下流に繋いだ発現プラスミドをDGAT1p:LUCレポーターと共にプロトプラスト一過性発現系に導入し、LUC発現を活性化しうるcDNAを探索したところ、DREBサブファミリーに属するAP2/ERF型転写因子A2が同定された。DGAT1プロモーターの転写開始点上流域約900 bpにはDREB結合配列として知られている配列が存在し、A2遺伝子のT-DNA挿入破壊株では開花後8日目の果実でのDGAT1 mRNAは野生型株に比べ約4割低下した。しかし、種子TAG含量に野生型株とA2破壊株の間で大きな違いはなかった。現在、A2近縁遺伝子との多重破壊株の解析や、これら遺伝子の破壊が他の油脂合成系遺伝子の発現に与える影響の解析を進めている。