抄録
ラン藻Synechococcus sp. PCC 7942のメタロチオネイン(SmtA)はアミノ酸残基数が56の低分子量のタンパク質であり、CysとHis含量が大きく、1分子当たり3~4原子の亜鉛を結合する。SmtAは細胞内の過剰の亜鉛イオンと結合することによって毒性を解消したり、亜鉛イオンの恒常性を維持したりすると考えられている。また、ファイトレメディエーションなどの応用にも有用なモデルタンパク質と考えられる。本研究では、ラン藻Synechococcus sp. PCC 7002のもつSmtAホモログの金属結合部位の構造を変化させた改変SmtAホモログを作製し、その金属結合能について解析した。金属結合部位の構造を変えるために、独立した金属結合部位と思われるC末端側の15アミノ酸残基の部分に部位特異的変異によって1~2残基のGly、あるいはさらにAsp又はGluを挿入した改変SmtAを作製した。作製した改変タンパク質のうち、His49とGly50の間に2~3残基挿入した改変SmtAでは、亜鉛に対する親和性が減少し、カドミウムに対する親和性が上昇した。一方で、Gly46とCys47の間に挿入したものでは親和性に変化は見られなかった。前者については、アミノ酸の挿入により金属結合部位のサイズが大きくなり、亜鉛よりもイオン半径の大きいカドミウムに対する親和性が上昇したと考えられる。