抄録
カドミウム(Cd)は、低濃度でも植物の生長を大きく阻害する。これは酸化ストレスを誘発するためと考えられている。酸化ストレスに対する防御機構の一つとして、フェノール性化合物による抗酸化作用が考えられるが、これらの化合物がCdストレスの防御にどの程度関与しているのかは不明である。そこで本研究では、シロイヌナズナのCd毒性の緩和におけるフェノール性化合物の関与について検討した。まず、Cd処理を長期間容易に行えるように、担体を用いないシロイヌナズナの水耕栽培法を確立した。この栽培法において、14日齢の植物体を25μM Cdで7日間処理したところ、乾燥重量当たりのフェノール性化合物の含有量は、未処理の1.4倍に増加した。これは、Cd処理によって、フェノール性化合物が蓄積されたことを示している。
フェノール性化合物の中でもフラボノイドは、紫外線による光酸化ストレスの防御物質として知られている。そこでCd毒性の緩和におけるフラボノイドの関与を調べるために、フラボノイド合成能を欠損した突然変異体(tt4)を用いて生長におけるCdの影響を調べた。結果は、25μMのCd処理によって、WTでは乾燥重量が未処理の77%にまで減少したのに対し、tt4では63%にまで減少していた。この結果は、シロイヌナズナにおいて、フラボノイドがCd毒性に対する防御物質として機能していることを示唆している。