日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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植物の先端成長パターンの定量解析と数理モデル化の試み
*岩元 明敏近藤 衣里杉山 宗隆
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p. S0045

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抄録
植物の先端成長は遺伝・環境要因によって大きく変化し、その結果は細胞増殖と体積増大の違いとして現れる。私達は両者の複合的な関係をもとに先端成長パターンとその制御を明らかにするため、シロイヌナズナの根端成長を材料とした細胞動力学的解析を行ってきた。これは器官成長を「細胞の流れ」としてとらえる解析法であり、根端成長に適用すると根の任意の位置でどの程度細胞体積が増大し、細胞が増殖しているかが定量的に明らかとなる。さらに、こうして得られたデータについて、私達は独自に開発した数理モデルを用いた解析を行っている。このモデルは、器官の成長活動量がその器官の細胞数に比例すること、成長活動量が細胞増殖、体積増大、器官維持の総和となることを仮定したもので、簡潔な微分方程式で表される。方程式の係数からは、器官成長の各側面(細胞増殖、体積増大、器官維持)のコスト(効率)を見積もることができる。このような手法を用いてゲノムの倍数化が成長に及ぼす影響を解析し、2倍体から4倍体への倍数化に伴って細胞当たりの成長活動量が増大し、細胞増殖コストの上昇が起きていることを示唆する結果を得た。また、温度が成長に与える影響を解析し、低温では細胞増殖と体積増大の効率が低下していることを示した。本シンポジウムではこうした解析結果を紹介し、数理モデルを用いた細胞動力学的解析の有効性と問題点について検討する。
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© 2010 日本植物生理学会
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