2025 年 65 巻 3 号 p. 192-195
医療に携わる者には職務を遂行するにあたって遵守するべき職業倫理である医療倫理が課されている.医療倫理は,場所や時によりその内容は異なり,また各医療人により考え方が異なることもある.そのような医療倫理は,古くは「ヒポクラテスの誓い」に始まり,以降多くの多様な倫理綱領が制定され言語化されてきた.我々医療に携わる者は,変遷する医療倫理を常に学習する必要がある.医療者が,患者を対象として研究,いわゆる臨床研究を行う場合には別途配慮が必要である.なぜなら,診療の目的は「患者の福利」の実現であるのに対し,研究は「研究成果の最大化」を目指すものであり,研究目的達成のために患者を害するリスクが常にあるためである.そのため,今日では国が法令や倫理指針を規定して,研究者は法令や指針を遵守して研究を実施しなければならなくなった.さらに,精神神経医学に係る研究については,研究参加における代諾の取得の問題など,特有の課題もある.本稿では,医療者に課される医療倫理について検討し,小児精神神経疾患に関する臨床研究に携わる研究者が知っておくべき研究倫理の現状と問題点について皆様と一緒に検討を行う.