写真測量とリモートセンシング
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環境調査とマルチスペクトル写真
荒木 春視
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1975 年 14 巻 3 号 p. 10-18

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抄録

自然環境の事前評価の1手法としてマルチスペクトル写真の利用の可能性について次の6つのテー7の研究が行なわれ, 次の結論を得ることができた。
1) 植物の反射スペクトル大気汚染に弱い樹木は全反射量が少なく, 近赤外域での反射が相対的に増加し, 反射光量比 (IR1/G, IR1/R) が大きくなっている。2) 排ガス汚染度の指標初期汚染の指標樹木としてケヤキ, サクラ, エノキ, エソジュが, 汚染尺度として反射光量比 (IR1/G, IR1/R) が有効である。3) 廃棄物の自然発火と樹木活力ゴミ埋立処分地周辺の, 外観上, 樹勢の変化を捉えられない樹木でも反射光量比から判別が可能であり, 活力低下の原因を追求することによって, 埋立地で生成されたメタンが誘因となってのゴミの自然発火が原因であることが判明した。4) 自然斜面の樹木活力傾斜が20度を越えると樹木の反射光量比 (IR1/G, IR1/R) の低下が目立ち, 崩壊が20度を越えると急増する事実との一致をみた。5) 観光容量と緑の活力樹林の健全度を反射光量比から分級し, その分布から生態系に乱れを与えている範囲を推定した。この範囲が現時点での観光容量である, との仮定にたてば保全面積の設定された時, そこでの観光容量は算出できる。6) 地すべり地の分光反射特性ある地すべり地では地すべり崩壊斜面の分光反射特性から土壌含水量が斜面上部で多く, その下位で少なく, 底部で再び多くなると推論された。その含水量の少ない斜面部分に沿って, 地すべり後背山地の中腹部をリング状に囲むようにして, 反射光量比からみての, 活力の低い樹木が分布していた。地形, 地質と比較して, 遙かに自然条件が集約的に内蔵されている樹木についての分光反射特性の解析は地すべり予知への1つの新らたな手がかりを与える可能性を含んでいるといえそうである。

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© 社団法人 日本写真測量学会
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