日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション1 10/8(水)15:45~17:00
氷・岩石衝突破片の飛翔速度と衝撃圧の減衰
*荒川 政彦
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p. 21

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抄録

氷惑星・氷衛星の衝突集積過程は、その物理的素過程である衝撃波の発生と伝播及び破壊過程の研究を通して理解することが重要である。天体の衝突時には、破壊・合体・再集積等の現象が起こるが、このうち実際に起こる現象は、天体の衝突物性に大きく依存する。特に天体内部での衝撃波の減衰過程は、破壊の程度や破片速度を決める重要な物理過程である。これまでこの減衰過程は氷や岩石等の単物質で調べられているが、現実の氷天体は氷と岩石の混合物であると考えられる。そこで、大きく衝撃インピーダンスの異なるこれらの成分からなる混合物中を衝撃波がどのように減衰するかを調べる必要がある。本研究では、この衝撃波の減衰過程に対する岩石混合の効果を調べるため氷・岩石混合物の高速度衝突実験を行った。
 衝突破壊がカタストロフィックに起こる場合、試料表面から飛び出す衝突破片の飛翔速度は自由表面での物質速度とみなすことができる。そこで試料の表面速度(vs)を観測することにより物質速度の減衰の様子を調べた。また、物質速度がバルク音速より小さい場合、衝撃圧(P)は、P=ρC0vs/2(ρ:密度, C0: バルク音速)で見積もることができるので衝撃圧力の減衰過程も知ることができる。
  氷・岩石混合物試料は空隙のない均質な構造をしており、氷粒子と蛇紋岩粉末を1対1の質量比で混合して作成した。試料はサイズ15mmから30mmの立方体で、この試料に二段式軽ガス銃により加速したサイズ1.6mmのナイロン弾丸を速度3から4km/sで衝突させた。破壊の様子は高速度カメラにより撮影し反対点速度と衝突面でのエッジ速度を求めた。実験後の試料は回収してサイズ分布を計測した。解析の結果、衝突面でのエッジ速度は反対点速度の4から1.5倍の速度になることがわかった。試料サイズが大きくなる程この比が大きくなることから、圧力の減衰が衝突点から遠方になる程大きくなることが予測される。また反対点速度は、試料サイズと-2.5のベキ乗の関係にあり、これを衝撃圧に換算すると圧力も距離の2.5乗で減衰していることになる。

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