日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション1 10/8(水)9:15~10:30
216.5-224.5 nm減光ピークを示す煤の選択生成、及びピーク位置とグラファイト構造との関係
*木村 勇気佐藤 岳志墻内 千尋
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p. 3

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抄録

これまでの多くの観測によって、我々の銀河に存在する星間塵のほとんどが217.5 nmに減光のピークを示すことが分かっている。この減光の起源となる物質は炭素質グレインが有力であると考えられており、graphite、HAC、coal、fullerenes、graphite onions、diamond-like carbon、PAHs そして QCCなどが提案されているが、これまでそのピーク波長位置やシャープなprofileを十分に満たす物質は得られていない。今回我々は、メタンガス中で金属ワイヤーを加熱するだけの簡単な方法で、この220 nm付近にシャープな減光ピークを示すcarbonaceousグレインの創製に成功したことについて報告する。また、生成条件によって吸収ピーク波長をコントロールできることが分かった。さらに、高分解能電子顕微鏡観察からグレインサイズとピーク波長位置との関係を明らかにする。
メタンガス80 Torrで満たした実験装置内で金属ワイヤーを加熱すると黒い煙が立ち昇るのが見えるようになる。1,400℃で加熱した際に得られた煤の紫外線スペクトルを測定したところ、224.5 nmに鋭い吸収ピークを示した。この吸収ピークは、加熱温度を上げる事で短波長側にシフトし、2,800℃においては216.5 nmを示した。この時、生成温度とピーク位置とはリニアな関係がみられ、星間減光スペクトルに見られる217.5 nmの吸収ピークは2,600℃でメタンガスを加熱することで得られる事が分かった。
高分解能電子顕微鏡観察の結果、得られた煤はグラファイトが巻いた構造をしていた。煤のグレインサイズは、224.5 nmを示す1,400℃での場合50 nmであり、2,800℃では5 nmであった。すなわち、217.5 nmに対応する候補物質が5 nm程度のグレインサイズをもつグラファイトの巻いた構造によって説明できることが分かった。これまで計算によって、5 nmサイズのグラファイトが217.5 nmを示すであろうと予測された。しかし、5 nmというサイズの揃った粒子が存在しているとは考えにくく、その様な粒子を作製する事も困難であった。しかし、今回の実験により、ガスから粒子が生成する場合には、条件次第でかなりサイズの揃ったものが得られることが分かった。

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