日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション1 10/8(水)15:45~17:00
プレートの発達と天体の熱史:プレート厚の自己調節機構
*山岸 保子柳澤 孝寿栗田 敬
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p. 35

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抄録

岩石型天体である、地球、火星、金星を比較すると、その熱的活動の現われでもある表層環境は現在大きく異なっている。各の惑星の大きさや太陽からの位置の違いが、その熱的活動度の違いをもたらす要因であるのは明らかである。しかしより重要な要因はプレートテクトニクスの存在の有無である。地球においては、もちろんその存在は明らかであるが、火星については、過去存在していた可能性は示唆されているものの、現在はプレートテクトニクスの存在はおろか、いかなる熱的活動も見られない。また金星では、その存在を示唆する証拠は無い。プレートテクトニクスの存在の有無は、その惑星の熱的進化に対して極めて重要な影響を及ぼす。このことはプレートの進化が天体の熱史に対し重要な要素であることを示している。本研究ではプレートの成長に従って、天体内部の熱的状況がどのように変化するかを調べる。
プレートの進化は、天体の内部がその熱をどれだけ効率的に表層へと輸送出来るかによって支配される。しかし、急激に熱が表層へ運ばれると、プレートの進化は阻害されるが、天体内部の冷却はそれだけ急速に進行し、最終的にプレートは大きく成長する。一方で、プレートが順調に成長する場合は、内部の熱輸送率は時間と共に減少し、現在でも内部での熱活動は活発である可能性がある。一度、巨大なプレートが形成されてしまった場合、内部の熱輸送は著しく阻害され、結果、間欠的な熱輸送率の上昇をもたらす可能性もある。即ち、プレート厚と天体内部の熱的活動度は相互に密接な関係を持っており、しかも、プレートの成長率と熱的活動度の低下率が、一概に正の相関を持っているとは言えない。プレートの成長が天体内部の熱的状況を変化させ、かつ内部の熱的状況がプレートの成長を支配する。プレートは、天体が、自らが運べる熱の輸送効率が大きくなるように成長、または退化し、その厚さを自己調節していると考えられる。本研究では、粘性率が温度に依存する場合の対流を考え、単純化する為に対流層上部に出来る伝導層をプレートと捉える。対流の活発度と粘性率の温度依存性の強度、発熱の度合いにより、伝導層厚がどのように変化するか求める。様々な対流でのパラメータスタディを行い、どのような対流の場合に、前述のような自己調節機構が働くのかを調べ、岩石型天体の熱的進化を規定している物理は何かを考察する。

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