日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション3 10/9(木)9:15~10:45
画像分光望遠鏡による月面測光
*佐伯 和人秋山 演亮中村 良介武田 弘
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p. 41

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抄録

 画像分光望遠鏡ALIS(Akita Lunar Imaging Spectrometer)は、月の分光反射率を測定するために開発された望遠鏡である。得られる月画像は、その各ピクセルが380nm~1060nmの連続スペクトル輝度データを持つ。この秋には測定波長がさらに1700nmまで延長される予定である。発表ではALISによる地上月観測技術の現在と、最新の成果データを報告する。 ALISは、国際宇宙ステーション搭載をめざして開発された。軌道上からの長期月観測により、月面反射率モデルを構築し、月面を衛星搭載センサの放射輝度校正のための標準被写体とすることを目的としている。この計画は日本宇宙フォーラムの宇宙環境利用地上公募研究の一環である。ALIS画像は以下の手順で処理される。フラットフィールド補正、ダークフィールド補正、により見かけ相対輝度の正しい画像をつくる。この相対輝度を絶対輝度にするために、恒星ベガの分光撮像データを元に、測光用に公表されている標準スペクトル輝度に変換する係数を各波長ごとに計算し、この係数を月画像に乗じて絶対輝度画像を得る。今回のバージョンでは月観測時とベガ観測時との大気厚さの差の影響が未補正なので、絶対輝度値にはまだ達していない。一方、相対反射率画像を作るためには、太陽入射角・観測角の違いによる見かけ輝度の差を補正するために、測光補正関数でつくたフィルター画像を各波長の月画像に乗算する。これら各段階の処理に必要なALIS用ソフトを開発し、撮影した月画像を処理した。 得られた月および恒星のスペクトルにより、4万箇所以上の月地質特徴を表した相対反射率連続スペクトルデータを得た。また、大気の散乱による像のにじみの波長依存性を定量的に測定した。宇宙ステーションからの月観測では大気はないが、月探査機SELENEの分光データ解析手法の研究や、月上空のSELENEとの同時観測に、地上に設置したALISを使用する計画を進めているため、大気の補正は必須である。今後は、得られた大気散乱のデータ解析や、月面の絶対輝度と相対反射率それぞれから絶対反射率を導き比較することで、月測光モデル精密化を図る。

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© 2003 日本惑星科学会
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