日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション3 10/9(木)9:15~10:45
月面における可視・近赤外波長域の光反射特性
*恩田 靖
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p. 42

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抄録

 月表面における物質の分布を解析する方法の一つとして、可視・近赤外波長域におけるマルチバンド画像解析が挙げられる。観測される月の反射スペクトルは観測の位相角に応じて変化し、さらに反射光強度の位相角依存性を表す位相関数にはスペクトルタイプ依存性がある。これらはマルチバンド画像解析によって月面の組成・表面状態を推定する際に障害となる。
 過去にClementine探査機により撮影されたUV-VIS画像の観測幾何学補正法は幾つか発表されている。特にClementineサイエンスチームが発表した補正式(McEwen et al., 1998)が広く受け入れられている。しかし、位相関数の鉱物依存性、宇宙風化依存性、地質依存性等のスペクトルタイプ依存性は課題として残されている。
 Clementine探査機の画像データから、スペクトルタイプ依存性を考慮した位相関数を求める方法が確立された(横田2002)。この方法では、3つの観測バンド(415nm, 750nm, 950nm)において自己組織化マップ(Self-Organizing Map)と呼ばれるクラスタリング法に従い、月面を9個の領域に自動分類している。その分類の妥当性はUSGS地質区分図及びルナプロスペクタの元素存在度データを利用して確認された。その後、Clementine画像データベースから同一月面を異なる位相角で観測したデータを用いて各グループに対し、3つの観測バンド毎に0°から30°までの範囲で位相関数を求めている。この結果、スペクトルグループ毎に位相関数を用いて補正を行う事で、月全面における化学組成の推定が従来よりも正確に行えるようになった。
 本研究では月面レゴリスを模擬した試料を作成し、その試料からスペクトルタイプ依存性を含めた位相関数を測定する。試料は自己組織化マップによる分類 (横田2002)に適合する鉱物組成で作成する。作成した試料の反射スペクトルは、入射出角を自由に変えることができる可変角反射測定装置を用いて測定する。この測定により各試料について連続した観測波長に対する詳細な位相関数を求める。さらに、求めた位相関数の中で位相角範囲が15°から30°かつ観測バンドが415nm、750nm、950nmであるものに関してClementineデータから得られた結果(横田2002)と比較し、本研究の妥当性を確認する。本研究による測定が妥当であれば、異なる観測バンドや30°以上の位相角に関しても実験的に位相関数を求めることができるようになる。

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